「風切りの木」

山のふもと、小さな集落に一本の大きな欅（けやき）があった。
まっすぐ空へ伸びる幹は、どんな嵐にも折れず、百年を超えて村を見守ってきた。

その年の夏、八月十三日。
朝の光が欅の葉をきらきらと照らし、四方から風がやってきた。
枝は揺れ、葉はざわめき、まるで何かを告げるようだった。

村の若者・遼（りょう）は、欅の下で立ち尽くしていた。
心の中に、ずっとしまっていた言葉があった。
でも、怖くて、まだ誰にも伝えられなかった。

そのとき、ふと一枚の葉が遼の肩に落ちた。
欠けゆく月の夜を経た葉は、色を失い、役目を終えたように軽かった。
遼はそれを手に取り、ゆっくり息を吸った。

「破」の日は、古い殻を破る日だと、祖母が言っていた。
手放すことで、風が通り、新しい芽が光を受けるのだと。

遼は欅に向かって一歩近づき、声を放った。
胸に重ねてきた想いを、まっすぐ、真昼の空へ。
その声は風に乗って遠くへと届き、欅の葉がやさしくざわめいた。

午後、風はやや静まり、木陰は涼しく、心の中に新しい空気が流れ込んでいた。
遼は肩の力を抜き、落ち葉をそっと地面に戻した。

葉は土に還り、やがて新しい芽を育てる。
それは、今日を生きた遼の心にも同じことが起こるだろう。

壊すことは終わりじゃない。始まりのための静かな準備なんだ。

この日、欅は相変わらずまっすぐで、空はどこまでも青かった。
欠けゆく月は、夕暮れの空にひそやかに浮かび、遼の背を見守っていた。

** 2025年8月13日（水）の “心の天気予報”**
（明るくもなく、険しくもなく、ただ静かに流れていく…そんな一日かもしれないよ）

干支（日の干支）：甲寅（きのえとら）の日だね。春に枝を伸ばす大樹”のような存在を表し、生命力と勢いに満ちている。まっすぐ前へ進むエネルギーを秘めている。
六曜：先勝（さきかち）。朝のうちに静かに動きを始めると、いつもより心が軽やかに感じられるかもしれないね
九星（日家九星）：四緑木星。風がそよぎ、葉がそっと揺れるような、柔らかな成長と広がりのエネルギーかもしれないね
月齢：19.3くらい（欠けゆく月が、静かに夜を照らすような…）

🕊 奈央さんのひとこと

そのままでもいいよ、とそっと寄り添う午後に、心の棚に小さな月の光を置くように。過ぎゆく月を思い、静かな呼吸を感じられる時間が、今日のあなたの心にそっと寄り添うといいな

🌱 開運のヒント

朝の行動を早めに
先勝の日でもあるから、午前中のうちに大事なことを動かすと、追い風を受けやすいよ。

木に触れる・緑を見る
陽の木のエネルギーを持つ日だから、庭木や街路樹、公園の草木などに意識を向けると心の流れも整いやすい。

真っ直ぐな言葉で伝える
遠回しよりも、温かく誠実な言葉で想いを伝えると、相手の心に届きやすい日だね。

水分をこまめに
木は水を得て成長するように、今日の身体も潤いを欲しているかもしれない。

身につけたい色：緑・青緑・金
成長と広がり（木）に、調和（金）を加える色が、あなたを支えてくれるよ。

読み解き

🌳 木の力が満ちる日

甲寅＋四緑木星という組み合わせは、どちらも**「木」のエネルギーを持っているんだ。
木は成長・発展・交流を象徴していて、この日は芽吹きが重なって勢いが増す日**。
ただ、満月を過ぎて月が欠け始めているから、その成長は勢いよりも整え・調える方向に向かいやすい。
例えるなら、大きく枝を伸ばした木が、余分な葉を落として光を通し、次の季節のために呼吸を深める感じだね。