村はずれの、小さな丘の上に、
「手放しの庭」と呼ばれる不思議な庭がありました。

その庭には、
季節を告げる花が咲き乱れることもなければ、
見事な実りが生まれることもありません。

けれど秋になると、
誰にも知られず、
一輪だけ菊の花が咲くのです。

その庭を守る老女・ツキは、
村人たちにこう言いました。

「ここは、手に入れる庭じゃないよ。
　ここは、心を置きにくる庭さ。」

ある日、若い娘ミオが訪れました。
胸には、消せない後悔がありました。

「何をしても、私はうまくやれません。
　どうすれば手放せますか？」

ツキは小さな菊を指さしました。

「見える花だけが咲いているわけじゃない。
　この菊はね、
　他の花たちが散ったあとに、
　誰にも見られず咲くんだよ。」

ミオは首をかしげました。

「じゃあ、この菊は寂しくないのでしょうか？」

ツキは微笑みました。

「寂しくなんてないとも。
　“もう咲かなくていい”と誰にも言われないからね。
　咲くことも、咲かないことも、
　自分で選べる花なんだよ。」

その夜、下弦の月が
庭をやわらかく照らしました。

ミオはそっと目を閉じ、
胸の痛みに触れました。

それは、別れでもなく、失敗でもなく、
まだ形になっていない“願い”だったのです。

ツキの声が、静かに届きました。

「手放すってのはね、
　忘れることじゃないよ。
　もう苦しまなくていいって、
　心に許すことさ。」

ミオの頬に、一筋の涙が落ちました。

けれどそれは、悲しみではなく、
やっと呼吸ができた涙でした。

夜が明けるころ、
庭の片すみで菊がひとひら、ほどけました。

🌙 奈央さんのことば

「これでいいのかな」ではなく、
「ここからでいいんだ」と、
　静かに言える朝が来ますように。

🍂 心の天気予報｜2025年10月14日（火）

🗓 今日のめぐり

「丙」はあたたかな陽の火。
「辰」は形になる前の可能性。

今日は “眠っていた気持ちが、少しだけ顔を出す日”。
無理に燃やさず、
胸の奥にある微かな火を守ることが大切です。

大地の星、中心の星。
この星がめぐる日は、
“誰かの評価より、自分の声を聞く日。”

曖昧だった気持ちに、
うっすらと輪郭が生まれるタイミングです。

午（11〜13時）のみ吉。
朝は迷ってもいい。
昼過ぎに心が整い、
夕方には静かな答えが見え始めます。

下弦の月を少し過ぎた、静かな夜。
これは “手放しの月”。
「浄化と整理」 を象徴するタイミング。

満月で受け取った感情を、
もう一度胸の中でふるいにかけ、
「これはまだ持っていたい」
「これはもう手放していい」
そんな対話をする夜です。

手放しとは、諦めることではなく
“背負い続けなくてもいい”と許すこと。

菊が咲きはじめる頃。
盛大に咲くのではなく、
ひっそりと開くその姿は、
声をあげずに強くある花。

枯れゆく草木の中で、
最後に咲くこの花は、
「終わりの中で始まる強さ」を教えてくれます。

大きな波が続く八専期間の中で、
今日は“間日（まび）”――
荒れない、小さな休息日。

空を見上げるだけで、
心のざわめきが半歩ずつ遠ざかります。

🔍 「考えすぎ」を脱ぐ日

答えを出さなくていい。
ただ、自分にとって“重すぎる荷物”を、そっと置いていい日。

空白は、弱さではなく「新しい余地」。

種類	おすすめ	効果
🪞 グッズ	ミラー、白いノート	自分を映し、心を整える
🍵 フード	ゆず茶・さつまいも蒸しパン	心を温めて“内側の回復”