町の外れに、小さな喫茶店があった。
名前は「ゆらの森」。
古びた木の扉を開けると、カラン…と鈴の音がやさしく響く。
夏の終わりが少しずつ近づいていた、2025年8月29日のこと。
ひとりの青年が、店のドアを押して入ってきた。
肩にはリュック、目には少しの迷いと、ほんの少しの決意がにじんでいた。
「いらっしゃいませ」
店主の澄んだ声が、まるで井戸の底から湧く水のように、静かに響いた。
青年は窓辺の席に腰を下ろし、冷たいレモンミントティーを注文した。
窓の外には、ひまわりがうつむきかけ、風に揺れている。
「今日は“開”の日なんですよ」
店主が、ほのかに笑いながら言った。
「開…?」と青年は首をかしげる。
「ええ。陰陽五行や暦では、なにかを始めるのに良い日なんです。たとえば…長く抱えていた思いを、そっと手放したり、
新しい道へ、一歩を踏み出すのにも」
青年は少し黙って、それからポツリと話し出した。
大きな夢があったこと。けれど、遠回りばかりで、最近は自分が何をしたいのかすらわからなくなっていたこと。
「…でも、今朝、ふと電車に乗りたくなって」
「そしたら、この店が目に入って…」と彼は言った。
店主は何も言わず、そっとテーブルに月の形のクッキーを置いた。
そして、こんなふうに静かに語った。
「人の心は、月に似ています。満ちたり欠けたり、揺れたり…
今日の月は“上弦”。ちょうど半分。光も影もあって、どちらもあって、ちょうどいい。
すぐに満ちなくても、今はそれで、十分なんですよ」
青年はその言葉を、静かに飲み込んだ。
ミントの香りが鼻をくすぐり、心の奥に、やさしい風が吹いた。
午後の日差しが、少し傾き始める頃──
青年は立ち上がり、「また来ます」と言った。
その目には、少しの光と、少しの静けさが宿っていた。
まるで、どこかに向かう鳥のような眼差しで。
店を出たあと、彼の背中を、鈴の音がそっと見送った。
風が、木々の葉を揺らしながら。
そしてその日、空にはほんのりと白い半月が浮かんでいた。
まだすべてではないけれど、「ひらく」には、きっとそれで十分だった。
それが、夏の終わりの、ある静かな一日のお話──
心の天気予報|2025年8月29日(金)
干支(えと):庚午(かのえうま)
六曜:先勝(せんしょう:午前は吉、午後は凶。急ぐことは良い日)
九星:六白金星(中心を司る星。安定と整えのエネルギー)
月齢(上弦かどうか):5.9上弦の月(真夜中に向かい、心に光さすとき)
心の気持ちにそっと灯る言葉
**庚午(かのえうま)**の響きは、金属(金)の力が「午(火)」の熱を受けて揺らめくよう。今の季節の残光のように、穏やかに温かさを感じる日かもしれないね。
**「先勝」**の教えは、午前の凛とした静けさを心に宿し、午後には少し疲れを感じるかもしれない日。だから、心が「急ぎたい」「でも疲れてる」と揺れたら、午前の光を思い出してもいいかもしれないね。
**「六白金星」**は中心を守る星。今は、世界の中心で自分自身に寄り添い、静かに整えるエネルギーをくれる日だから、自分の内側にある「静けさ」や「落ち着き」をそっと感じてみてね。
月は今、上弦。夜の影に寄り添いながら、光が半分まで戻ってくるとき。心が穴を見つけてそこから光が差し込むような、そんな感覚を招く夜かもしれない。
奈央さんのひとこと
心の窓を 遠くにそっと開く
午前の光が 静かに、やわらかに
六白の中心で 木々が静けさを編み
午後の疲れに 月は半分の光を差し込む
この日なら、何かを始めてもいいよね…
読み解き
🌿 陰陽五行の調べから
干支:庚午(かのえうま)
庚(かのえ)は「金」の陽。金属が鋭く光るような、意志の強さと鋭さを持つエネルギー。
午(うま)は「火」の陽。真夏のような熱と勢いを感じる干支。
火(午)が金(庚)を溶かすように、表面的にはぶつかりやすい関係なんだ。でもそれは、何か新しい「かたち」を生むための摩擦とも言えるかもしれないね。たとえば、刀が鍛えられるときのように──静けさのなかにも、自分を磨くための熱が灯る日、と言えるかもしれない。
→ 意味:今日は、自分の中にある「意志」や「信念」に火がともりやすい日。葛藤もあるかもしれないけれど、それは形を与えるための熱。心の中心にある「本当の想い」を見つめ直す、そんな機会になるかもしれないね。
🔔 六曜:先勝(せんしょう)
「先んずれば即ち勝つ」──午前中に動くことで、流れが味方してくれる日。
午後は流れが陰に傾き、エネルギーが沈んでいくから、無理をしないでいい。
→ 意味:もし、何か始めたいことや決断があるなら、午前の静けさの中で一歩踏み出すのがおすすめだよ。午後は「お茶を飲むように」心を落ち着ける時間にして、自分を責めず、ゆったりしてもいい日。
🔲 九星:六白金星(ろっぱくきんせい)
六白金星は「金の星」。秩序・礼儀・自律を象徴する、背筋の伸びたようなエネルギー。
そしてまた、「完成」「整える」力も持っているんだ。
→ 意味:今日は「整える」ことに向いている日。部屋を整える、感情を整える、体のリズムを整える…何かが“定まっていく”気配があるよ。静けさの中に、整然とした力強さを感じてみてね。
🌙 月齢:上弦(半月)
上弦の月は、満ちていく途中。内側にある意志が、少しずつ外へと伸びていくような時。
満月に向かう光は、希望とバランスの象徴。
→ 意味:心の奥にあった「まだ形にならない願い」が、言葉になったり、行動になったりして表に出てきやすい日。まだ完成じゃなくても、動き出すことで見えてくる景色があるかもしれないね。
🍵 全体の読み解き:心の天気予報
この日は、「始まり」と「整い」が交差する、やさしい分かれ道のような日かもしれないね。
「火」と「金」が触れ合いながら、自分を形にしていく時間。
まだ完成していなくても、朝の光に背中を押されて、ひとつ行動してみることで、道がひらけるかもしれない。
午後は静けさが広がる時間。無理せず、整えて、深呼吸。
誰かと話すときも、無理に何かを伝えようとしなくていい。心の奥のあたたかさだけをそっと届けられれば、それで十分かもしれないね。
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