駅前の商店街の端に、小さなカフェがある。
大きな欅の木が見守るそのカフェは、夕方になると、陽の光と葉の影が入り混じる、美しい光の部屋になる。

今日は金曜日。
仕事帰りに立ち寄ったそのカフェで、静かに珈琲を飲むのが、沙耶の小さな楽しみだった。

だけどこのところ、沙耶の胸には、ずっとくすぶっていた思いがあった。

「このままでいいのかな」
「本当にやりたいことは何だったっけ」
「ただ流されてるだけかも……」

けれどそれは、まだ言葉にならない、煙のような感情だった。
答えを出すには、勇気が少し足りなかった。

その日、カフェのテーブルに光が射し込み、
ラピスラズリのブレスレットが、まるで合図のように光を放った。

ふと、手にしていたスマホに「今日は甲申、一白水星、月齢20.1。変化と手放しのタイミングです」という通知が届いた。

「今日の運気予報？」
思わず苦笑いをしながらも、沙耶はその言葉に、なぜか背中を押された気がした。

そうだ、
焦らなくてもいい。
でも、何か一つだけ、変えてみよう。

そう思って、彼女はスマホのメモ帳を開き、ひとつだけ「今週やってみたいこと」を書き込んだ。
それはずっと先送りにしていた、「カウンセラー養成講座の説明会に申し込む」という、ささやかな一歩だった。

大きな木が葉を揺らし、風がテラスに舞い込む。
カップの中の珈琲は、やさしくぬくもりを残したまま、彼女の決意を見守っていた。

空には、満月の余韻が残る、静かな夜。
帰り道、ふと見上げた空に、小さく欠け始めた月が浮かんでいた。

「少しずつでいい。わたしも、変わっていける気がする」

そんなふうに思えたその夜、
沙耶の心には、そっと新しい風が吹いていた。

🌙 心の天気予報｜2025年9月12日（金）

🐉 干支（日干支）：甲申（きのえさる）

「甲」は大木のようにまっすぐな木の気、「申」は変化や刷新を意味する金の気。
今日は、内側にあるまっすぐな思いが、ちいさな変化のきっかけをくれる日かもしれないね。
風にそよぐ木々のように、心の奥で何かが軽やかに動き出す予感。

「午前は凶・午後は吉」とされる日。
あわてて動くよりも、午前中は静かに流れに任せて、午後から少しずつペースを上げていこう。
無理せず整えることで、かえって調和が生まれる時間だよ。

“深い水のような感情”と“流れる柔軟性”を象徴するこの星は、
内面の声に耳をすませたり、素直な感情を受け入れる力を与えてくれるよ。
無理に明るくふるまうよりも、「感じること」そのものを大切にすると、心に静かな広がりが生まれる日。

月は、満ちきった光から少しずつ静けさを取り戻していくころ。
たっぷりと抱えていた思いや感情を、そっと手放す準備が始まる夜。
感謝とともに、名残を惜しみながら手放す…そんな優しい気持ちで過ごせたら素敵だね。