📖 心がほどける物語、続きは本の中で静かに綴っています。

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本のご紹介

🍉スイカと宇宙と、わたしの日

7月27日。

カレンダーの小さな文字に「スイカの日」と書かれているのを見て、ふと昔のことを思い出した。

夏の横綱とも呼ばれるスイカ。

甘くて冷たくて、子どものころのわたしには、あれが“ごほうび”の象徴だった。

でも、社会人になってからの夏は、汗とプレッシャーと忙しさで、どこかスイカの味すら忘れてしまっていた気がする。

「頑張ってるのに、どうしてうまくいかないんだろう」

最近、そんな気持ちばかりが胸にたまっていた。

仕事も恋愛も、努力してるつもりなのに、報われていない気がしていた。

そんなとき、ふと「少し帰っておいで」と母から電話があった。

久しぶりに帰った田舎の実家。どこかホッとする空気。玄関先に漂う、草の匂い。

縁側に座っていた祖母が、にこにこと笑って、私にスイカを切ってくれた。

まるで昔にタイムスリップしたみたいな時間だった。

「今日はスイカの日なんだって」

私がそう言うと、祖母は「へぇ、夏の横綱かい。立派な名前だねぇ」と笑った。

「このスイカもね、誰かが汗水たらして育てたんだよ。

土を耕して、水やって、暑さの中で…それでも、スイカは何も言わずに甘くなる。偉いねえ」

その言葉を聞いて、なんだか胸の奥がジンとした。

私は、どこかで「結果」を急ぎすぎていたのかもしれない。

努力はすぐに報われるべきだって、そんな風に焦っていたのかもしれない。

祖母の部屋に飾られていたカレンダーには、「祝彩日めくり」という言葉のカレンダーがあった。

その日──27日の言葉には、こう書かれていた。

努力しつつ

宇宙に呪いを言う人は

宇宙を敵にし

自分だけで闘っている

努力せずとも

宇宙に感謝を言う人は

宇宙を味方にし

宇宙とともに生きている

それを読んだとき、はっとした。

わたし、ずっと宇宙を敵にしてたかもしれない。

頑張ることにしがみつきながら、「なんでこんなに辛いの?」って、文句ばかり言っていた。

「ありがとう」って、言ってなかった。

スイカの果汁が口いっぱいに広がる。

ふわっと甘くて、懐かしい。

種をぷっと飛ばして、空を見上げた。

青空の先に、わたしを見守ってくれている“何か”がいる気がした。

それを「宇宙」と呼んでもいい。

目に見えないけれど、味方になってくれる存在。

努力は悪くない。でも、心の中で「ありがとう」を言うことは、もっと大事かもしれない。

この日から、私は毎朝、こっそり空に向かって感謝を言うようになった。

「今日も私を見てくれて、ありがとう」って。

仕事がうまくいかない日でも、眠れない夜でも、

それだけでちょっと心がほどけるから、不思議だ。

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