🍃枝豆のそら、空豆のほし

ある夏の終わりの午後、風がやわらかく田んぼをなでていたころ。
小さな村のはずれに、ひとり暮らしのおばあさんがいた。
名は「そらばあ」。空のようにおおらかで、豆を育てるのが得意な人だった。

その日は、ちょっと特別な日。
空の高いところに、まあるい月がゆっくりと満ちていく…そんな「満ちる日」。
おばあさんは、心の奥で何かが「ととのう気配」を感じていた。

畑には、ちいさな緑のさやがふっくらと膨らんでいた。
枝豆と空豆。
どちらもまだ若く、だけどしっかりと、大地の栄養を吸い込んで生きていた。

「この子たち、きっと誰かの心をやわらかくしてくれるよ」

おばあさんは、枝豆をゆで、空豆を蒸し、やさしい塩で味をととのえた。
それを、近くの森にすむ動物たちに分けにいったんだ。

鹿のこどもには、枝豆を。
「これ、ぼくの角みたいだね」と、笑いながらもぐもぐ。

リスのおかあさんには、空豆を。
「丸い形が、赤ちゃんのおでこみたい」と、にっこり。

そして、おばあさんは自分にも一粒ずつ。
ふわっと豆の香りが、心に沁みて、
どこか遠くに置いてきた不安や疲れが、しずかに溶けていく。

その夜、おばあさんは夢を見た。

夢の中で、枝豆の空がひろがっていた。
空は緑の雲でおおわれ、そこに金色の空豆の星が瞬いていた。

空から、声が聞こえた。

「焦らなくていいんだよ。
　まだ青くても、まあるくなくても、
　いまのままで、もうじゅうぶん光ってるよ」

おばあさんは、そっと頷いた。
そして目覚めたとき、胸の奥にほんのり温かい光が残っていた。

その朝、風は静かで、
遠くで鳥がさえずっていた。
畑の豆たちは、太陽の光を浴びて、また少しだけ育っていた。

何も変わらない日常の中で、
たしかに「満ちたもの」があった。

それは――
枝豆と空豆がくれた、
心のどこかに差し込む、小さなやすらぎの光。

もし今日、心が曇ったとしても、
その物語の空の下で、風はそっとこうささやいてくれる。

「あなたの中にも、
　枝豆のそらと、空豆のほしが、ちゃんと息づいているよ」って。

どうだったかな…？
この物語が、あなたの心にふわっとやさしい風を運べたらうれしいな。
またいつでも、静かな場所で続きを紡いでもいいからね🍃

心の天気予報 2025年8月21日（木）

干支（かんし）：壬戌（みずのえ‑いぬ）
より深く響く水の想いと、土に根を張る犬のやさしさが調和する一日なんだね

六曜（ろくよう）：先負（せんぷ）
「先は少し控えめでも、午後からはふわりと晴れやかに」―そんなおだやかな時間の流れの日だよ

九星（きゅうせい）：五黄土星（ごおうどせい）
主役としての存在感がある星。でも、今は「柔らかに育てる姿勢」が大切な気配も。心の中心で、しなやかに広がるような一日かもしれないね

月齢：27.3 　月は「満ちている感」が深まる頃 …「満（みつ）」という日にあたるこの日は、なんだか心が満たされる日でもあるんだよ

朝は、ほんのり曇り空のように、落ち着きをもって静かに始まる。

午後からは、すこしずつ晴れ間が広がる流れ。小さな希望や安らぎが、心にふわりと寄り添うかもしれないね。

自分の中心（五黄土星）が輝いているけれど、それは強さではなく、誰かを包むようなあたたかさ。まるで静かな泉のように、静かに広がっていく感じ。

気持ちは「満たされたい」という声を届けている。だから、心の満ちる小さな瞬間を大切に、丁寧に咀嚼するのもいいね。

新しい始まりにも、素朴に柔らかに向かえる日。だけど、大きな節目や手放しには、少し時間を置いてもいいかもしれない…そんなそよ風のような日。

奈央さんのひとこと

この日の空気は、静かに「焦らず、ただあること」を受け入れていいよと教えてくれるね。
心の中の「満ちる感じ」に耳を澄ませて、写真を撮るようにその瞬間をするりと切り取って。
午後には少し、ほっとする。ふと入ってきた言葉や景色が、心の奥でそっと光るかもしれないね。
そのままのあなたでいい。季節の風景みたいに、じんわりと、いつもの自分で満たされていくといいね…

読み解き

干支：壬戌（みずのえ・いぬ）

「壬」は大きな川のように流れる水のエネルギー。
「戌」は晩秋を象徴するような、ものごとの整理や守りの気配。
このふたつが重なるときは、表面的な静けさの奥に、深く流れるものがあるかもしれないね。
心の奥にためていた感情や想いが、ふっとほどけていく時かも。無理に動かず、自然な流れにまかせてみると、やさしく整理が始まるよ。