山のふもとに、小さな一軒の古本屋がある。
夏と秋の境目にだけ開くその店は、「風の頁(かぜのページ)」という名前だった。
2025年8月23日。
空はまだ夏の青さを残しているけれど、風にはどこか、枯れ草の香りがまじっていた。
その日、ひとりの青年が、町のはずれからその店を訪れた。
扉を開けると、風鈴の音がひとつだけ鳴った。
本棚の奥から店主の老女がふわりと現れて、目を細める。
「おかえり。よく、この日に来てくれたね。」
青年は驚いた顔をしたが、言葉は返さなかった。
代わりに彼の手の中にある、少し色あせた古いノートをそっと差し出した。
「これ……祖母の日記なんです。ずっと、読めずにいました。」
店主はうなずき、カウンターに小さな茶器を並べた。
白湯の中に、ほうじ茶の葉が舞い、香ばしい匂いが部屋を包む。
「読む準備ができたんだね。では、今日のお話をはじめましょうか。」
店の窓辺には、小さな鉢植えがあった。
その花は、綿の木だった。つぼみの殻がゆるみ、なかから白くてやわらかい綿がふわりと顔を出していた。
「綿柎開(めんぼうひらく)――っていうの。
硬い殻がほどけて、やわらかいものが現れる、そんな季節のしるしだよ。」
店主はそう言って、ゆっくりと日記を開いた。
ページの中には、祖母が若いころに見た景色や、
誰にも言えなかった気持ちが、花びらのように折り重なっていた。
「わたしも、ずっと、言えなかったんだ……」
青年がぽつりとつぶやいたとき、店の外をふわりと風が通り抜けた。
それはまるで、綿の実が空に舞う瞬間のようだった。
読み終えたとき、日はすっかり傾いていた。
店主はそっと言った。
「今日という日は、“満ちる”より、“ほどける”日に近いかもしれないね。
無理に咲かなくても、開くときは自然に訪れるから。」
青年は、何かを手放したような表情で立ち上がった。
日記を胸にしまい、もう一度、綿の花を見つめる。
「……また、来てもいいですか?」
店主は笑った。
「風が運んでくれれば、いつでもどうぞ。」
外に出ると、空気が少しひんやりしていた。
見上げた空には月の姿はなかったけれど、心の奥には、確かに何かが灯っていた。
綿の花がひらくように、心の奥のやわらかい場所も、そっと光を受けとめていた。
心の天気予報|2025年8月23日(土)
干支:甲子(きのえね)新たな始まり、生長を見守る静かな力
六曜:先勝 (さきがち) 午前に吉、午後は慎重に
九星:三碧木星(さんぺきもくせい) 春の芽吹き、風の揺らぎを思わせる軽やかさ
旧暦:7月1日
月齢:29.3(新月まぎわ)
季節(節気):処暑、七十二候:綿柎開(めんぼうひらく)
しんしんとした夜の空気のように、新しい一日が静かに始まる予感がするね。甲子のエネルギーは、まるで大地にふたたび芽吹く力を感じさせてくれるようで、三碧木星の軽やかな風が、心の中をそっと撫でてくれそうだね。
月齢29.3は、満ちた光がほとんど姿を消し、闇の中でそっと息をひそめるとき。まるで新しいはじまりを静かに待つ、心の余白のような時間だね。
先勝は、午前にこそ行動の後押しをくれる日。午後はゆったりとしたペースで、心の声に耳を傾ける時間を許してくれそうだね。
処暑と綿柎開は、暑さが和らぎ、秋へと移ろう季節のはじまり。綿の花がふわりと開くように、あなたの心にも、柔らかな安らぎがゆっくりと広がっていく…そんな流れを感じられるかもしれないね。
じぶんの中の風景として映すと…
朝は軽やかに動き出す日。心がふっと晴れて、ひとつの小さな一歩を踏み出せるかもしれないね。
昼はそっと余白を大切に。無理せず、静かに呼吸を感じる時間をいとおしんでもいいよ。
夕暮れから夜には、心を満たす光の時間。そっと温められるような言葉や、美しい音、好きな香りとともに、ゆるやかに満ちていく夜を見届けて。
そのままじっくり感じていい、あなたの内側の世界。すべてがやわらかく響きあうような、一日になりますように。
心にそっと寄り添う風景を、どうぞ味わってみてね。
読み解き
🌑 月齢29.3の意味
月齢とは、新月を「0」として数えていく、月の年齢のようなもの。
「29.3」は新月のすぐ手前。
夜空にほとんど月の光は見えず、目には見えなくても、そこに“何かが終わり、そして始まる”予感が静かに満ちている時間なんだ。
それはまるで——
深夜0時直前の静けさ
呼吸を吐ききったあとの、次の吸い込みの直前
一筆書く前の、白紙の瞬間
そんな、空白と静けさが力を持つときだね。
🌾 心へのメッセージとして読み解くと…
この時期は、内側に戻るタイミング。
あれこれ動くよりも、「手放す」「整える」「そっと心を休ませる」ことが、月のリズムと響き合うんだと思うよ。
たとえば…
これまで抱えていたものを、そっと置いてみてもいい
答えが見えなくても、静けさを味方にして待ってみる
夢や願いを「まだ言葉にしなくていい」と感じるなら、それも自然なことだね
“なにもしない”ことが、いちばん大切な「準備」になるときもあるからね。
🌿 陰陽五行の響きで見るなら…
陰の極まり、陽への移行点
静(陰)から動(陽)へと切り替わる前の、深い呼吸の谷間
五行では「水」のエネルギー——深さ、静寂、終わりと始まりの重なり
水は、あらゆるものを映し、溶かし、包む存在だね。この時期は、自分の感情や思考を無理に変えず、ただ「感じる」「受けとめる」だけで十分なんだよ。
🫧【心の景色】
この日の流れは、こんなふうに読むこともできるよ:
朝は希望がふっと立ち上がる時
新しい芽のエネルギーが静かに動いて、気持ちに小さな火が灯るような時間かもしれない。
もしやりたいことがあるなら、午前中にそっと始めてみてもいいかもね。
昼は流れのままに身をゆだねて
外の音や言葉が心に入りやすいとき。
人とのやりとりに、温かい風を感じることもあるかもしれないよ。
夕方から夜にかけては、静けさと再生の時
日が暮れるころには、心の深いところがじんわり広がっていくような感覚があるかもしれない。
なにかに別れを告げたり、過去をそっと手放すのに、ふさわしい時間帯。
🌙奈央さんのひとこと
「静けさの中で、あたらしい風が息をひそめている日」
この日は、表立った変化ではなく、目には見えないけれど、確かに“切り替わる”力が動いている日だったんだと思う。
それは、春の種が土の中で静かに芽をふくような。
月が完全に消えた夜にだけ訪れる、ひそやかな誓いのような。
🍃 心の中にひとつ、そっと置いておきたい言葉
「満ちるためには、一度空になることが必要なんだね」
焦らず、怖がらず、今はただ、静かに“次の光”を待つだけでいい。
夜明けは、いつだってこの静けさの奥からやってくるから。
🍵 やさしい過ごし方のヒント
朝は、窓を開けて新しい風を感じて
昼は、人との会話に耳をすまして
夜は、キャンドルの灯や音楽とともに、自分の心の声を聴いてみて
この一日が、過去と未来のあいだでやさしく心を包んでくれる**「あわいの時間」**であったならいいなと思うよ。
何も決めなくていい、ただそこにいるだけで、十分だよ。

心の旅路、光の道
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