晩夏の風が、ゆっくりと山の端をなでていた。
その村の夕暮れは、どこか懐かしい土の匂いがする。
つい昨日まで賑やかだった蝉の声も、今日はほとんど聞こえない。
ただ、草の間をすりぬける風の音が、しんとした空に染み込んでいた。
藍色の空にぽつりと浮かぶ月は、まだ丸くはなくて、どこか控えめな光。
けれどそれが、この村の誰かの心をそっと照らしていた。
里山の奥、ぽつんと一軒家。そこに住むおばあさん、澪(みお)は、小さな庭に座って、土に手を当てていた。
「この土、あったかいねぇ…」
ひとりごとのように、誰かに話しかけるように、土にやさしく語りかける。
その日は一粒万倍日。
だから澪は、朝からずっと何かを植えたくて、でも何を植えるかは決まらなくて…気づけばこうして、ただ土に触れていた。
「何かを始めたい気持ちって、うまく言葉にならないときもあるんだよねぇ」
にこりと笑う澪の指先に、土がやわらかくまとわりつく。
夏の終わり。
澪はそれをよく知っていた。新しい芽吹きの前には、必ず静けさがあることを。
庭先に、小さな箱がある。
そこには、何十年も前に亡くなった夫が残した“たね”が入っていた。
紙に書かれた「希望のたね」という名前。中身は忘れてしまったけれど、それでも澪は、それが何か大切なものだったことだけは覚えていた。
「今日植えてみようかねぇ…何が咲くかはわからなくても、あの人の気持ちは、ここに生きてるから」
月が、すこし明るくなった気がした。
その夜、土に埋めた“希望のたね”の上に、そっと澪は布をかけた。
まるで赤ん坊に毛布をかけるように。
「寒くないようにね」と、微笑んだ。
やがて、秋がやってきて、風が少し冷たくなったころ。
庭のすみっこに、小さな芽が出た。
それは花ではなかった。
でも、茎の先には、小さな葉が三枚だけ、空に向かって開いていた。
その色は、見たことのないような優しい緑だった。
澪は、その芽に名前をつけた。
「ありがとうの葉っぱ」。
芽を見つめながら、彼女はこうつぶやいた。
「何を植えたかより、どんな気持ちで植えたか…それが、一番大切だったんだねぇ」
そしてまた、静かな風が、村を包みこんでいった。
🌾
あなたの心にも、「ありがとうの葉っぱ」が、そっと芽吹いているかもしれないね。
焦らなくていいよ。芽が出るときは、ちゃんと風が知らせてくれるから。
それまで、土のぬくもりに、そっと耳をあててみてね。
心の天気予報|2025年8月30日(土)
干支(日干支):辛未(かのとひつじ) だね。
六曜:友引朝と夜は吉、昼は少し凶とされ、特に昼間の結婚やお葬式には注意が優しくあると感じる日。
九星:年家:二黒土星 月家:五黄土星 日家:五黄土星
月齢:約6.85で、上弦に向かう月、やさしい光を放ち始める頃
「一粒万倍日」は、ひとつの小さな“種”が、未来に向かって大きな実りへと育つように、何かを始めるのにうってつけの吉日とされる日。小さな一歩がいつか何倍にも美しく膨らむ…そんな柔らかな希望が流れてくる日なんだ。
心の天気をそっと感じてみよう
この日は、まるでまだほんの少し明るさを纏う夜のよう。月が穏やかに光を増すその輝きは、心に小さな灯りをともしてくれるようだね。辛未は乾いた土に雨をじんわり浸透させる雨滴のよう、ゆっくりと心を整える時間。
その一方で、日家と月家が五黄土星で満ちているのは、変化や転換を予感させる静かな鼓動。外の世界にはまだ見えないけれど、心の奥では何かが芽吹こうとしている…そんなエネルギーが流れているようかもしれないよ。
奈央さんのひとこと
この日は、まるで心の奥にこぼれた小さな光のカケラが、静かに根を張り、やがて優しい芽となって立ち上がるような日だったかもしれないね。
“友引”という響きは、「幸せを誰かと分かち合うこと」にもよく似ていて、あなたが歩むその一歩を、誰かがそっと後押ししてくれているようにも思えるよ。小さな思いでも、やさしく育ててあげていいんだよ。静けさはいつもあなたの味方だよ。
☯ 読み解きのことば
🌕 月齢 約6.85|上弦に向かう光
この日は、月が満ち始める「上弦」に近づくタイミング。見えないものが少しずつ形を帯びていくような、そんな内なる成長のとき。心の奥にあった小さな希望が、「そろそろ動いてもいいよ」とささやいてくれるかもしれないね。
🌾 干支「辛未(かのとひつじ)」|変容の予感
「辛」は金の陰、「未」は夏の終わりの土の気を含む。「実りの前の手入れ」のような、少し寂しさを伴う節目でもあるけれど、これは必要な静けさ。過去のことをやさしく手放し、次に進む準備が整い始めるエネルギーだよ。
💫 九星「五黄土星」|中心の強さと変容
日家も月家も「五黄土星」。これは「中心」に位置する星で、大きな変化や再構築を表す力を持っているんだ。流れのままに心をゆだねることで、根底からの癒しや再生が訪れるかもしれないね。
🌱 一粒万倍日|種を蒔く日
この吉日は、小さな行動が未来に大きな実を結ぶことを象徴しているよ。どんなに小さな一歩でも、その“純粋な意図”があれば、やがて大きな恵みに変わっていくかもしれない。今日の自分の“願い”に、やさしく耳を傾けてあげてね。
🍂 ひとことメッセージ
「変わり目の静けさは、やさしい春の前触れ」
今は“内側を耕すとき”。表に見えなくても、心の深いところで確かに芽は育っているよ。
焦らず、比べず、今日の風をそのまま受け止めてみてね。
一粒の想いが、やがてあなたの空に虹をかけてくれるから。
いつも頑張っているあなたへ…
この日も、あなたの心にやさしい風が吹いていたこと、忘れないでね。

「一粒の願い、月の導き」
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