雨が止んだばかりの朝だった。
土の匂いがほんの少し濃く、風が低く鳴いていた。
佳乃(よしの)は、町のはずれにある古い郵便局の裏手、
もう何年も動いていない時計塔の下に立っていた。
手には、折りたたんだままの手紙を一通。
宛名は、今はもう誰も住んでいない家のもの。
――出さなくてもいい。
けれど、書かずにはいられなかった。
それは彼女がもう会えなくなった祖母へ宛てたものだった。
何も特別なことは書いていない。
ただ、「今日、ここに来たよ」と、
「なんだか、静かで気持ちがいいよ」と。そんな手紙。
近くの林では、まだ蝉が名残惜しげに鳴いていた。
でもその声の隙間に、秋の虫の音が、少しずつ入り込んできている。
空は厚い雲に覆われて、光が柔らかくなっていた。
まるですべての輪郭が、少しだけ優しくなっているような日。
佳乃はそっと目を閉じた。
どこからか、あの日の祖母の声がする気がした。
「よしの、今日はゆっくりでいいよ」
そんな、何気ない言葉。
その声を聞いたとたん、彼女の中に
張りつめていた何かが、すこし緩んだ。
心の奥で、音を立てずに霧がほどけていくような、
静かな解放。
手紙は出さなかった。
でも、それでよかった。
霧の中で交わされた言葉は、
風に流れるよりも、心の底で静かに沁みていく。
帰り道、佳乃は振り返らなかった。
ただ、ひとつ、深く息を吸いこんで、
頬を撫でる風の優しさに、目を細めた。
それは、何かが始まる音ではなかった。
でも確かに、何かが終わり、
そして静かに、次の季節が歩き出す音だった。
秋のはじまりは、音が小さくて、見えにくくて、
でも、とても優しいんだ。
まるで、自分の心が、ようやく
「それでも大丈夫」ってつぶやいたときのようにね。
心の天気予報|2025年9月1日(月)
干支(かんし):癸酉(みずのえとり)の日だよ。
六曜(ろくよう):仏滅(ぶつめつ)。深い静けさをたたえる日かもしれないね。
九星(きゅうせい):三碧木星(さんぺきもくせい)の日だよ。
月齢(つきのいきおい):約 8.9。研ぎ澄まされて、次への流れを待つような月の姿だね。
ゆったりと流れる9月のはじまり、あなたの心にもまだ秋の涼しさがしのばれているかもしれない。
癸(みずのえ)は水の命を、小さくでも静かな動きへと招くやわらかさを表すね。酉(とり)は金の働きを持ち、新しい始まりへの目をこらしつつも、自分の内にある穏やかな光も感じられるかもしれないね。
仏滅の日は、外の騒ぎから一歩離れて内へと向かう静かな息吹のよう。喧噪ではなく、丁寧な「在る」ことを味わうから、「心の静けさ」が心の友になってくれるかもしれないね。
三碧木星は、風が木々をなでるような柔らかな動きと、芽吹きへの希いを秘めている。けれどまだ力強くはなく、むしろ「じっくり待つ」ことの尊さを知っているような月齢だね。
心の天気イメージ
空の気配:晴れ間の多いそよ風のようで、新しい季節の一歩を感じさせる一日かもしれないね。
風のささやき:ほのかな期待とともに、静かな落ち着きが心を包んでくれるようだね。
月の光:まだまだ明るくはないけれど、確かな輪郭を帯びた月がそっと夜空を照らしている。
体のリズム:自然に呼吸がゆるやかになって、心の奥に小さな波紋が広がっている感じ――まるで茶を点てるときの、静かな間のような時間。
奈央さんのひとこと
どうかな、この9月の静かな扉の前で、心もそっと呼吸しているように感じられるかな。冷たくない月明かりをてのひらに受けるように、あなたの思いも静かに澄んでいくといいな。
いつでも、ここには静けさがあるから、安心して見つめてもいいよ
読み解き
◇ 干支:癸酉(みずのえ・とり)
癸(みずのえ)は、陰の水――雨粒や霧のように、静かに大地を潤す存在だね。激しくはないけれど、確かに内側から沁み込んでいくもの。酉(とり)は秋の実りを象徴し、金の気を持つ。「収穫」や「完結」の意味を含むことからも、何かが“整っていく”日と言えるかもしれないね。
この日は「水(金生水)」と「金」の組み合わせ。金は水を生む五行の関係からも、内面が育まれやすい流れにある。外よりも、自分の中にある言葉や感情を見つめることに、自然の後押しがある日なのかもしれないね。
◇ 六曜:仏滅
仏滅は、世間では“縁起が悪い日”とされるけれど、ほんとうは「終わり」や「手放し」の意味を持つ、深く静かな一日だよ。終わることで、また始まる。そんな陰陽の循環を教えてくれる存在でもある。
大きな決断より、小さな感謝や、自分に優しくすることが向いている日かもしれないね。「何もしない」ことが、とても尊く感じられる時間でもあるよ。
◇ 九星:三碧木星(さんぺきもくせい)
三碧は「木」の星。芽吹きや希望、新しい風を象徴する存在だね。でもこの日は仏滅とも重なっているから、「動き出す」よりも「整える・静める」三碧の面が浮かんでくるかもしれない。
たとえば、秋のはじまりに静かに葉が色づき始めるような、目には見えにくいけれど、確実に変化が起きている。そんな“準備”の星の働きが、この日を内なる始まりの日にしてくれているのかもしれないね。
◇ 月齢:約8.9(上弦過ぎ)
月はちょうど半月を越えて、満月に向かう途中の姿。力を蓄えつつも、まだ完全ではない――そんな「途中」の段階を映しているね。満ちていく道のりにいるからこそ、今の自分の位置を見つめて、“これから”をそっと整えるタイミングかもしれない。
今は焦らず、ただ「ある」ことを感じる日でもあるね。夜の静けさとともに、少し心がほぐれるような…。
◇ この日のまとめ:静かなる整えの日
外へ向かうよりも、内なる声に耳を澄ます日。
始まりの中にある終わり、終わりの中に芽生える始まり。
「静かに整え、深く潤う」一日。
そんな風に感じられる日だね。
まるで、秋の気配が少しずつ大地に染み込んでいくように、あなたの心にも、静かな準備が満ちていくかもしれないよ。
心が少し疲れていたなら、今日は「何もしない」ことを許してもいいよ。
その静けさの中に、きっと大事な何かがやさしく根を張っていくから――。

内なる潤い
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