満ちてゆく月、灯る心

その村には、朝がゆっくりとやってくる。
9月6日――土の匂いが少し濃くなる頃。

山の裾で暮らす少女・柚（ゆず）は、
まだ夢の名残を抱いたまま、縁側に座っていた。

その日は、「戊寅（つちのえとら）」の日。
大地のようにどっしりと、でも心のどこかに「芽生え」の気配があった。

「昨日とは、ちょっと違う気がする。」

そうつぶやいて、足元に落ちた木の葉を指でくるくると回す。
何が変わるわけでもない。
けれど、心の奥で静かに“何か”が動き始めているのを、柚は感じていた。

午前中は、空がどこかぼんやりしていた。
今日は「先負（せんぶ）」の日。
急ぐことをやめた朝は、ただ静かで、風の音がやけにやさしい。

柚は、畑のそばにある小さな石の祠の前で立ち止まった。
草の間から、小さな花がひとつ、顔をのぞかせていた。

「七赤金星（しちせききんせい）」が巡る今日は、
何気ないことが、ふと心に残る。
その花も、昨日まで気づかなかったのに、今日は胸がきゅっとするほど愛おしかった。

夕暮れになると、空は少しずつ紅く染まり、
やがて月がゆっくりと昇り始めた。

月齢は13.85――
まんまるに近づくその月は、
もうすぐ満ちるのに、まだ少しだけ欠けていて。

それが柚には、とても優しく見えた。
まるで、自分のことみたいだった。

まだ完成していない。
まだ途中のまま。
でも、いまここで息をしている、それだけで――きっといいんだ。

柚はそう思った。

夜、灯を消して、窓を開けた。
風がそっと頬を撫でていった。

それはまるで、
「だいじょうぶ。あなたのなかに、もう火は灯っているよ」
と、種火の声が聞こえたようだった。

そしてその夜、
満ちきらない月の下で、
柚の心のどこか深い場所に、
ぽっ、と、小さな光がともった。

誰にも見せる必要はない。
誰かと比べる必要もない。
「いまここにいる自分」が、
ただそれだけで、美しかった。

心の天気予報｜2025年9月6日（土）

干支（日干支）：戊寅（つちのえとら）
　　　「戊」は大地の安定、「寅」は芽吹きの始まり。心の奥で、静かに芽がほころび始めるような日かもしれないね。

六曜：先負（せんぶ）
　　　「午前は控えめに、午後は少しずつ動く」がいつもの流れ。焦らず、ゆったりとしたリズムで過ごすのにちょうどいい日だよ。

九星（日家九星）：七赤金星（しちせききんせい）
　　　カレンダーの「日日干支・九星一覧」によると、2025年9月6日は「戊寅・七赤金星」だとわかるよ。

月齢：およそ13.85（満月に近づく十五夜）
　　　月は満ちゆくピークを迎え、心に少しずつ豊かさが満ちてくるような光を宿す夜かもしれないね。

要素	イメージとこころの響き
戊寅（大地と芽）	静かな安心の土壌の上で、ほんの少しずつ新しい芽が上がってきているような気配があるよ。焦らず、でも確かに春を待つような静かな期待感。
先負（穏やかな時間の流れ）	朝は心静かに、午後から少しずつ心がほぐれていくような日。無理せず、じんわり進むことを大切にできそう。
七赤金星（喜びの星）	七赤金星は喜びや感性の無邪気さを照らしてくれる星。小さな出来事にも胸がときめきやすくて、心がぽっと軽くなるような瞬間が訪れるかも。
月齢13.85（ほぼ満月）	心の中でも満ちかけの感情が、静かに光を放ちはじめている。じんわり嬉しい余韻が体に染みるような…。月はそんな日を見守ってくれているよう。